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正確にいえば、親が歳を取れば取るほど認知症になる可能性が高まり、相続は100%発生する。人生100年時代とは単純に長生きする時代がきたことではなく、親の認知症もセットで考えなければならないことを意味します。認知症と相続のスタートする時期と期間がわかれば確実性のある問題だが、残念ながら不確実性の高い問題である。両親二人のうち、どちらが先に認知症になり、どちらが先に亡くなるなんて誰もわからない。この部分だけをとっても不確実性が高い内容だが、子供側は、見て見ぬふりで先送りにしてもいいのだろうか。お盆と正月に家族と過ごすだけの関係でいいだろうか。このコラムを通じて、新しい視点でこの認知症と相続の不確実性の時代にできることを考えて、自分なりに最善の解に近づいて欲しい。
私の父83歳は、鹿児島生まれ6人兄弟の末っ子です。6人のうち3人の叔母や叔父は、認知症になってから10年以上生きました。二人の叔父と叔母は90歳過ぎてから亡くなりました。今、認知症の叔母96歳がまだ施設にいます。私にとっては認知症と相続の不確実性の時代は身近な問題である。認知症とお金の問題のコンサルタントとして日本全国の家族1500人以上を見てきました。それぞれの家族も問題は全く同じではないが、認知症に伴うお金の問題のパターンは似ていると言えます。
20、30年前であれば、平均寿命が75歳ぐらいだったため、相続だけにフォーカスすれば良かったのです。認知症になる前に亡くなっていたからです。人生100年時代は、いつどのぐらいの期間かわからない不確実性の高い認知症とお金の問題を子供世代は考えていかなくてはいけません。70代、80代の親世代の読者の方もいるでしょう。このコラムを読んでいるということは認知症でもなく相続が突然やってくる状態ではないはずです。なので、ご安心ください!親世代は新しい視点で自分自身、そして家族のために何が問題で、どんな選択肢があるか考えて欲しいと思っています。1回目のコラムではこの身近だがよく見えていない問題を中心に書いていきます。
日本は世界で最も高齢化が進んだ国の一つで、人口の約28%が65歳以上です。高齢化の進行は、健康、社会保障、労働市場、そして家族構造に多大な影響を与えています。特に、認知症の増加は大きな課題です。認知症の現状を見てみると、 約500万人が認知症であると推定されており、2050年には約700万人に達すると予想されています。これは、高齢化に伴う自然な結果であり、家族や社会はなんらかのケアを必要としています。
親が認知症になるということは、介護の問題だけにフォーカスすればよいわけではありません。自宅で、転倒して骨折、入院したという話は珍しくありません。医療・介護の問題についてくるのが、お金の問題です。治療費、入通院費などの医療費、高齢者施設への入居費用などの介護費は、どのぐらいを考えておけばいいのか。長期で入院したり、介護施設に入った場合はいくらかかるのか。そもそも、親の財産がいくらで、何があるのか聞いたこともない。多くの方は無関心です。親が認知症になると一気に凍結つまりアクセス不能な状態になります。それは突然起こり、親の財産が不明確なまま、介護費、生活費、医療費の支払いと向き合わなくてはいけません。
お金の問題に加えて、親の介護の問題は、家族が受ける精神的・経済的負担を増大させます。たとえば、地方にいる親の介護のために休職や離職をすることでの自分自身の経済的価値を下げ、収入も激減させることにもなり得ます。
認知症になるということは判断能力が低下することを意味します。つまり、今までできた、お金を銀行から引き出す、買い物をするといったことも不安定な状態になります。銀行に行って暗証番号を忘れて、3回入力を間違えるとATMでお金を引き出すことができなくなる。窓口での引き出しや、カード再開の手続きになり、そこで少しでも認知症などにより判断能力がないとされると、銀行側の判断でお金の引き出しそのものができなくなるかもしれません。銀行がいわば認知症発見のきっかけを作っているとも言えます。民法第3条2項には、こう規定されています。
「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」
つまり、認知症がきっかけで、自分自身、そして家族が今まで長年築いてきた預貯金、証券、不動産などの財産を動かすことができなくなること意味するのです。
相続は、財産の分配に関わる敏感な問題であり、しばしば家族間の紛争を引き起こします。相続の発生するきっかけ、つまり亡くなるタイミングは誰にも分かりません。生前の認知症とお金の問題から一転、一気に亡くなった後の見えない相続手続き、そして家族間の争いという不確実性に向き合わなければなりません。相続税が発生するのか、また相続税を現金として納税できるかなど、その時点では見えていないことだらけのケースが多いのです。
そのため、相続は遺された家族に悲しみ以上のものを残します。長年介護をした家族と、介護に無関心だった家族との争いが開始されるスタート地点に立つことになるかもしれません。
親が遺した財産の種類によっても影響が違います。 不動産、預貯金、有価証券、事業などの資産があった場合は、分け方、割合を決めるのは大変で複雑です。また、遺言書の所在がわからない、あっても明確でない場合、法的な解釈の問題が生じ、家族間での意見の不一致が起こりやすいです。 相続が原因で家族間に亀裂が生まれ、関係悪化が一気に進むケースがあります。これは、感情的な問題に加え、金銭的な利害関係が絡むため、しばしば複雑な問題に発展します。生前から家族信託の遺言機能を利用した対策、遺言の作成、家族間のオープンなコミュニケーションがそれを防ぎます。
次回のコラムでは、認知症と相続の不確実性の中で、今までの相続対策を超える家族信託という制度を中心にお話ししていきます。不確実性の中でも活路はあるのです。
株式会社ファミトラ
老後問題解決コンサルタント/家族信託コンサルタント 横手 彰太
オランダ、スペイン、北海道ニセコなどを転々とし、現在は東京在住。7年前から家族信託に取り組み、相談実績1500人以上・500組以上の家族会議に参加。
毎日9時30分就寝5時30分起床。「今から認知症対策が信条」
1972年生まれ 中央大学経済学部卒業
株式会社ファミトラ
ファミトラは「人生100年時代のコンシェルジュ」として、認知症だけでなく、家族の老後にまつわるさまざまな課題について伴走しています。成年後見制度や遺言、生前贈与といったこれまでの老後のお金対策に加え、新たな対策として「家族信託をあたりまえに」することを目指しています。「AgeTech」企業として、ITで効率化された家族信託のサービスを提供することにより、家族信託のコモディティ化を推進しています。
株式会社ファミトラ
〒106-0032 東京都港区六本木7丁目18−18 住友不動産六本木通ビル2F
代表取締役CEO 三橋克仁