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目次
ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の役割や仕事の進め方には、国ごとに大きな違いがあります。特に、米国と日本の間では、FAに対する職業観や業務の取り組み方に根本的な違いが存在しています。
米国では、FAは一生のキャリアとして位置づけられ、地域社会との信頼関係を長年にわたって築き上げていくことが重視されています。一方、日本では、金融機関の社員の一職種としてFAの業務が存在し、独立性や主体性があまり求められていない現状があります。
この記事では、米国と日本におけるFAの特徴や働き方の違いを詳しく解説し、それぞれの国でどのようにウエルスマネジメントが展開されているのかを紹介します。
米国のファイナンシャル・アドバイザー(FA)は、自分の出身地や縁のある地域でキャリアをスタートし、時間をかけてその地域の富裕層コミュニティでの知名度を高めていきます。また、複雑化する富裕層のニーズに応えるため、多くのFAはチームを組んで活動しています。
このチームは、シニアから若手まで様々な年齢層のFAで構成され、それぞれが異なる知見や経験を持ち寄ります。FAチームの中には20名を超える大規模なものもあり、中心的なFAはまるで会社のCEOのような役割を果たしています。
以下では、米国のFAがどのようにチームを組み、そのチームがどのような役割を果たしているのかを解説します。
米国では、ファイナンシャル・アドバイザーが大手金融機関に所属していても、そのチームは非常に独立性が高く、自分たちのブランドを大切にしています。FAのチームは、独自のホームページを持ち、まるで弁護士事務所のように主要FAの名前をチーム名に使用しています。また、メンバーであるFAやアシスタントの顔写真も掲載し、チームとしての信頼感や親しみやすさを演出しています。
さらに、FAチームはチームの運営やビジネス戦略を自分たちで主体的に決定しています。つまり、どのような顧客にサービスを提供するか、どのようなサービスを重視するかなど、チームの方針はFA自身がコントロールしているのです。このような自立性が、FAとしての価値を一層高めています。
金融機関は、インフラや情報、リサーチなど、FAチームの活動を支援する役割を果たしており、FAチームの基盤をしっかりとサポートしています。金融機関の支援とFAチームの自主性がうまく融合することで、相乗効果が生まれ、顧客に対してより高い付加価値を提供できるのです。このシナジーにより、チーム全体が顧客に対して幅広く、かつ高度なサービスを展開できる仕組みとなっています。
米国におけるファイナンシャル・アドバイザーは、その職業を単なる仕事ではなく、人生をかけた一生のキャリアとして捉えています。FAは、富裕層に対する専門的なサービスを提供する中で、強い職業観、倫理観、使命感を持つことが求められています。
彼らは、お金に関する専門知識を駆使して顧客の財産を守り、増やし、さらには次世代に伝えていくことに情熱を注いでいるのです。この姿勢が、彼らの仕事に対するプロフェッショナリズムを支えています。
また、転勤がないため、同じ地域で長年仕事を続けることができ、顧客との関係を長期的に深めていくことが可能です。このことが、富裕層コミュニティ内での評価の向上につながり、さらなる顧客の信頼を得る重要な要素となっています。その反面、不誠実な行為を行うと、富裕層コミュニティ内での評価が大きく棄損し、仕事を続けられなくなりますので、信頼の獲得と維持には倫理観や誠実さが大変重要になります。
米国において、ファイナンシャル・アドバイザー、医者、そして弁護士の間にはいくつかの重要な共通点があります。それは、「職業がまず先に立ち、その後に所属する組織がある」という考え方です。
つまり、これらの職業に携わる人々は、まず「何をする専門家であるか」ということが最も重要であり、どの病院や法律事務所、あるいは金融機関に属しているかはその次に来るのです。
米国では、IFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)は、社員として金融機関に所属するアドバイザーと並ぶ、非常に重要な形態として広く認識されています。
IFAとしての独立を希望するFAたちは、より自由に顧客に寄り添ったサービスを提供したいと考えています。例えば、提供する商品やサービスが所属する金融機関に限定されなくなることで、顧客一人ひとりにとって本当に適した資産運用計画を提案することが可能になります。
さらに、IFAを支援するプラットフォーム会社の存在も大きな役割を果たしています。これにより、IFAは独立していても、充実したサポートを受けながら活動することができるのです。
日本では、金融機関における営業職の社員に、米国のファイナンシャル・アドバイザー(FA)のような独立性や主体性を持たせることはほとんどありません。営業職は、基本的に会社が設定した営業目標や販売商品の指示に従い、業務を行うことが求められています。また、人事異動により勤務地や社内職種が変わることも一般的であり、社員としてのキャリアは会社によって決定されることが多いです。
つまり、日本ではまず「所属する会社の社員」という立場があり、その中で「営業職」という役割が存在する形になります。このため、社員個人の独自の判断や戦略を発揮する場は少なく、あくまで組織の一員としての動きが中心となります。
以下では、日本と米国におけるFAのキャリアや職業観の違いについてさらに深く掘り下げ、日本におけるウエルスマネジメントの現状とIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)の増加についても解説していきます。
米国においてファイナンシャル・アドバイザーは生涯のキャリアとして確立されており、FAは自分のキャリアビジョンに応じて、大手金融機関に所属してその支援を受けながら活動するか、あるいは独立してIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)として自立したビジネスを展開するかを選ぶことが可能です。
一方、日本ではIFAとして独立して初めて「FA」としてのキャリアを真にスタートさせることになります。このため、日本におけるFAのキャリアは、個々のアドバイザーの独立性が非常に限定されているのが現状です。
金融機関のアドバイザーは、主に収益目標や販売目標の達成日本でも、主要な金融機関は米国で確立された「ウエルスマネジメント」に注目し、その導入とインフラの充実に力を入れ始めています。ウエルスマネジメントとは、富裕層の顧客に対して包括的な資産管理や財務アドバイスを提供するサービスであり、資産運用、相続、税務計画など多岐にわたる分野をサポートするものです。
ウエルスマネジメントの中心には、顧客との信頼関係を築き、長期的に価値あるアドバイスを提供できるFAが不可欠です。日本においてもこの考え方が徐々に広まりつつありますが、依然として米国と比較するとその普及には課題が残されています。
近年、日本でもIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)になる人が増えており、IFAの存在が徐々に広く認知されつつあります。IFAとは、特定の金融機関の営業方針に縛られず、独立した立場で顧客に対して資産運用や財務のアドバイスを行う専門家のことです。
IFAは、富裕層の顧客に対して中立的なアドバイスを提供できるため、ウエルスマネジメントを根付かせる重要な存在とされています。富裕層だけでなく幅広い層の人々にも質の高い財務アドバイスを届ける可能性を秘めており、その評価が今後の日本におけるウエルスマネジメントの普及に大きく関わるでしょう。
今回の記事では、米国と日本におけるファイナンシャル・アドバイザー(FA)およびIFA(独立系ファイナンシャル・アドバイザー)の現状とその違いについて詳しく解説しました。
米国では、FAは生涯のキャリアとして確立されており、自身の独立性を活かして長期的に顧客と信頼関係を築くことが重視されています。一方、日本では、金融機関に所属する営業職がFAのような役割を担う場合が多く、独立してIFAとして活動することで初めて、顧客に対してより自由で柔軟なサービスを提供できる環境が整います。
この記事を通じて、米国と日本におけるFAとIFAの役割や職業観の違い、そしてそれぞれがもたらすウエルスマネジメントの意義について理解を深めることができたと思います。これからの日本では、IFAの普及とウエルスマネジメントの概念の浸透が、より良い金融サービスの提供と顧客満足度の向上につながるでしょう。
【著者】
5バリューアセット株式会社
副社長
山村 浩之
メリルリンチ証券、米国ビジネススクール留学、米系自動車メーカーをへて、メリルリンチ・インターナショナル・バンクに入社。その後、メリルリンチ日本証券、三菱UFJメリルリンチPB証券(現:三菱UFJモルガン・スタンレー証券)において一貫してウエルスマネジメント業務に関わる。三菱UFJメリルリンチPB証券では大阪支店長、本店長をへて、超富裕層を対象とする米国メリルリンチPrivate Banking Investment Groupの日本ヘッドに就任。また、米国メリルリンチにおけるFAプラクティスをサポートするPractice Management Consulting Groupとも密接に関わる。
5バリューアセット株式会社
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